「自然の中で遊ぶことは、子どもの成長に良さそう」
そう感じていても、
「でも、勉強や成績にはどうつながるの?」
と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

自然の中で過ごす時間は、ただの遊びや気分転換ではありません。
実際に、文部科学省や国立教育政策研究所などが行っている全国規模の調査では、自然体験の多さと、理科の学力や探究力との間に関連があることが示されています。この記事では、国の調査データをもとに、自然体験と学力と探究力にはどのような関係があるのか、なぜ自然の中での体験が学びにつながるのかについて紹介します。

1.自然体験は本当に学力につながる?

「自然体験は子どもの成長に良い」という話は、以前からさまざまな場面で語られてきました。
一方で、保護者にとって気になるのは、「それは、学校の勉強にもつながるの?」ということではないでしょうか。

この問いに対して、参考になるのが、国立教育政策研究所が実施している「全国学力・学習状況調査」です。
令和7年度の調査では、中学生を対象に、
「これまでの生活の中で、自然の中で遊ぶことや自然観察をすることがありましたか」
という質問を行っています。そして、その回答と理科の学力との関係を分析しています。その結果は、興味深いものでした。

2.自然体験が多い生徒ほど、理科の正答率が高い

国立教育政策研究所の「令和7年度全国学力・学習状況調査 理科の学習指導の改善・充実に向けた調査分析」では、自然体験に関する質問への回答と、理科の「知識・技能」に関する設問の平均正答率を比較しています。
結果は次の通りです。
自然の中で遊ぶ・自然観察理科「知識・技能」平均正答率当てはまる49.2%どちらかといえば当てはまる45.9%どちらかといえば当てはまらない43.6%当てはまらない36.6%
自然の中で遊んだり、自然観察をした経験があると答えた生徒ほど、理科の「知識・技能」に関する設問の平均正答率が高い傾向が見られました。国立教育政策研究所自身も、「自然の中で遊んだことや自然観察をすることは、観察・実験における技能を身に付けさせるために大切」と分析しています。
数字で見ると、その差は12.6ポイント
「当てはまる」と回答した生徒の平均正答率は49.2%。
一方、「当てはまらない」と回答した生徒は36.6%でした。
その差は、49.2% − 36.6% = 12.6ポイント。
もちろん、この数字だけから「自然体験をすれば12.6ポイント成績が上がる」と考えることはできません。
学力には、家庭環境や学校での学習、生活習慣など、さまざまな要因が関係するからです。
ただし、全国規模の調査において、自然体験の経験と理科の「知識・技能」の間に明確な傾向が見られていることは、自然の中で学ぶ意味を考えるうえで重要なデータといえます。

自然体験の経験がある生徒ほど、理科「知識・技能」の平均正答率が高い
49.2% → 45.9% → 43.6% → 36.6%
※国立教育政策研究所「令和7年度全国学力・学習状況調査」より作成

自然体験は「理科の知識」だけに関係する?

ここで、「理科だから自然体験と関係があるのでは?」と思う方もいるかもしれません。確かに、自然観察や野外活動と理科の学習には直接的なつながりがあります。植物、昆虫、土、水、天気、地層、生き物など、自然の中には理科の教科書に出てくるテーマがたくさんあります。

しかし、自然体験の教育的な意味は、それだけではありません。
国立青少年教育振興機構が行った「青少年の体験活動等に関する意識調査(令和元年度調査)」では、自然体験と「探究力」との関係も調べられています。

ここに、自然体験のもう一つの重要な価値が見えてきます。

3.自然体験が多い子ほど「探究力」も高い

令和元年度の調査では、自然体験の多さと「探究力」の関係について、次のような結果が出ています。

自然体験「探究力」が高い割合
多い66.9%やや多い53.8%ふつう44.6%やや少ない35.0%少ない23.4%
自然体験が「多い」と回答した層では、「探究力」が高い割合が66.9%。
一方、自然体験が「少ない」層では23.4%でした。
その差は43.5ポイントにもなります。


自然体験が多いほど「探究力」が高い

自然体験「多い」66.9%
自然体験「少ない」23.4%

※国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する意識調査(令和元年度調査)」より作成

この調査は、単に「自然体験をしたことがあるか」だけを見るのではなく、自然体験や生活体験、社会体験などと、青少年の自立的行動習慣や探究に関わる資質・能力との関係を分析したものです。

★そもそも「探究力」とは?

この調査における「探究力」は、単に「勉強ができる」という意味ではありません。
「わからないことをそのままにせず調べる」「自分から進んで取り組む」「実験や観察で新たな発見をすることに興味がある」「自分の思ったことをはっきりと言う」など、知識・技能、思考力・判断力・表現力、学びに向かう力・人間性に関わる16項目への回答から算出されています。
それぞれの回答を点数化し、合計点が33~48点の子どもを「探究力が高い」と分類しています。

つまり今回のデータは、自然体験が多い子どもほど、「自分で疑問を持ち、調べ、考え、行動する」といった探究に関わる力が高い割合が大きかったことを示しています。

4.なぜ自然体験が学びにつながるのか

では、なぜ自然の中で過ごすことが、学力や探究力と関係するのでしょうか。
その理由の一つは、自然には「答えが用意されていない」からだと考えられます。

例えば、畑で野菜を育てているとします。
「なぜ、この野菜は大きくならないんだろう?」
「昨日まで元気だったのに、なぜ葉がしおれているんだろう?」
「虫に食べられている。どうしたらいい?」
「同じ場所に植えたのに、こっちは元気なのはなぜ?」

自然の中では、次々と「なぜ?」が生まれます。そして、その答えは教科書を開けばすぐに見つかるとは限りません。

観察する。
比べる。
仮説を立てる。
試してみる。
失敗する。
もう一度考える。

この繰り返しそのものが、探究的な学びにつながっていきます。

5.自然の中では「教えてもらう前に考える」機会が生まれる

学校の授業では、先生から問いが与えられ、必要な知識や方法を学びながら答えを導いていくことがあります。

一方、自然の中では、そもそも「何が問題なのか」を自分で見つけるところから始まることがあります。
例えば、「トマトを育てる」という一つの活動でも、

「どうすればよく育つ?」
「水はどれくらい必要?」
「日当たりは関係ある?」
「土はどうしたらいい?」
「虫がついたらどうする?」

と、子ども自身の問いが生まれます。そして、自然は必ずしもこちらの思い通りにはなりません。

天候が変わる。
虫がつく。
動物に食べられる。
予定通りに収穫できない。
そうした「予測できない出来事」が、さらに考えるきっかけになります。

つまり自然体験は、知識を覚えるためだけの学びではなく、知識を使って考えるための学びにもなります。

6.自然学舎が大切にしている「自然×体験×学び」

自然学舎では、自然の中でただ遊ぶだけではなく、自然そのものを「学びの場」として捉えています。

土に触れる。
野菜を育てる。
生き物を観察する。
季節の変化を感じる。
自分で収穫する。
食べる。
誰かに届ける。

そうした一つひとつの体験の中に、たくさんの「なぜ?」があります。
そして、その問いに対して、自分で考え、試し、仲間と話し、また試してみる。
自然学舎が大切にしているのは、こうした「体験から問いが生まれ、問いから学びが深まる循環」です。

これは、単に自然についての知識を身につけることとは違います。自然を題材にしながら、
・観察する力
・考える力
・試す力
・工夫する力
・人と協力する力

を育てていく。その積み重ねが、学校での学習にもつながる「学ぶ力」の土台になっていくと考えています。

田植え

7.自然体験は「勉強の代わり」ではなく、学びの土台

ここで大切にしたいのは、「自然体験をすれば、勉強をしなくても成績が上がる」という話ではありません。

文部科学省や国立教育政策研究所の調査も、自然体験が学力を直接的に上げるという因果関係を示したものではありません。
一方で、

  • 自然体験の経験がある生徒ほど、理科の「知識・技能」の平均正答率が高い
  • 自然体験が多い青少年ほど、「探究力」が高い

という関連は、複数の全国規模の調査で確認されています。だからこそ、自然体験を「勉強とは別のもの」と切り離すのではなく、学ぶ力を育てるための一つの重要な環境として捉えることができます。

8.まとめ|自然の中で育つ「学ぶ力」

自然の中には、教科書には載っていない「問い」がたくさんあります。

なぜ?
どうして?
どうしたら?
もっとよくするには?

その問いに出会い、自分で考え、試し、失敗し、また考える。その経験の積み重ねが、子どもたちの「学ぶ力」を育てていきます。
実際に、国立教育政策研究所の令和7年度全国学力・学習状況調査では、自然の中で遊んだり自然観察をした経験がある中学生ほど、理科の「知識・技能」に関する設問の平均正答率が高い傾向が見られました。

また、国立青少年教育振興機構の調査では、自然体験が多いほど「探究力」が高い割合も大きくなっています。

自然体験は、勉強の「代わり」ではありません。
自然の中で「なぜ?」に出会い、自分で考える経験そのものが、学びの土台になる。
自然学舎は、そんな学びを日々の体験の中につくっています。

参考資料

  • 国立教育政策研究所「令和7年度 全国学力・学習状況調査 報告書・調査結果資料」
  • 国立教育政策研究所「理科の学習指導の改善・充実に向けた調査分析について」
  • 国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する意識調査(令和元年度調査)」

※データ出典※
文部科学省|青少年の体験活動等に関する意識調査(令和元年度調査)PDF
国立青少年教育振興機構の公式サイトでも、令和元年度調査の集計結果を確認できます。
国立青少年教育振興機構|令和元年度 青少年の体験活動等に関する意識調査

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